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株式会社 エムズサイエンス

Big Discoveries from Small Seeds

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中枢神経系疾患治療薬 SA4503 (Cutamesine dihydrochloride)

SA4503
(一般名称:Cutamesine dihydrochloride)とは

SA4503はシグマ受容体に選択的に作用する、新規の低分子化合物です。シグマ受容体は解明されていないことが多く、なぞめいた受容体として知られてきました。しかし、その反面でシグマ受容体の様々な生理機能への関与、とりわけ高次脳機能に影響することが数多く報告されています。SA4503についても、記憶学習障害を改善する作用、抗うつ作用などを示すことが実験的に確認されています。

さらに最近になって、脳梗塞モデル動物において障害された運動機能の回復を促進させるなど、興味深い作用を持つことが明らかになってきました。

以前からSA4503が様々な神経機能を調節することが分かっていましたが、新たに見出されたこれらの知見は、SA4503がシグマ受容体を介して神経の再生・成熟を促進する可能性を示唆しており、SA4503の薬剤としての展望を大きく広げることになりました。

SA4503によっては明らかな神経細胞の
突起伸長作用が見られた

どのような病気の治療薬になるのか?

  • 脳梗塞発症後の運動機能回復
  • うつ病
  • 認知症

脳梗塞は先進国では死亡原因の上位を占める疾患で、多くの場合、まひなどの後遺症を残すことも深刻な問題です。このため、血栓を溶かす働きをするtPAが脳梗塞急性期の治療に利用できるようになったことは、大きな福音をもたらしました。しかし、tPAは発症後3時間以内に投与する必要があるため、実際に恩恵を受けられる患者さんは、この薬剤が早くに承認された米国でさえ、全体の5%程度に留まっていると言われています。神経再生に焦点を当てたSA4503のコンセプトは、tPAを含む従来の脳梗塞治療薬とは全く異なり、より多くの患者さんにとって有用な、画期的な薬剤となることが期待されます。また、脳梗塞と同様に中枢神経系の器質的な傷害を伴う、脳挫傷や脊髄損傷への適応も考えられます。

モノアミン仮説」と呼ばれる、うつ病の病因論があります。簡単に言うと、脳内モノアミンの欠乏によって、うつ病が起きるというものです。事実、SSRIなどの抗うつ薬は、セロトニンあるいはノルアドレナリンの再取り込みを抑制し、細胞外におけるこれらのモノアミンを増加する作用があります。この仮説はうつ病や抗うつ薬を研究するうえで非常に重要な概念ですが、いろいろな矛盾点があることも以前から知られていました。一方で近年、神経学は大きく変貌しつつあります。一昔前まで神経細胞は再生することがないということになっていましたが、成人になっても脳神経の一部は再生されることが証明されています。また、うつ病は解剖学的に明らかな変化を伴わない疾患とされていましたが、器質的な要因の関与を必ずしも否定できないことも分かってきました。この様な研究成果に呼応して、神経新生を介して抗うつ薬が作用を発揮している可能性が議論されるようになりました。SA4503は実験モデルにおいて抗うつ作用を示すことが明らかになっていますが、SA4503に神経再生的な作用があるというロジックからも抗うつ薬として有用性であることが考えられます。

イメージ図

認知症を含む多くの神経変性性疾患は、様々な原因によって脳内の神経細胞が減少することに起因すると理解されています。しかし自然な流れとして、これらの病態においても、成人脳における神経新生が脳機能の維持、あるいは回復に寄与しているかもしれない、とういう考え方が広がっています。この領域に限ったことではありませんが、従来の治療法では必ずしも十分な治癒が望めないのが現状であるため、「神経再生」は大きな期待が寄せられているテーマです。SA4503は記憶学習障害を改善することが実験的に確認されており、この分野でも大きな可能性を持っていると考えています。

開発の現状

これまでに健康人を対象とした第I相臨床試験PET試験を実施してまいりました.PET試験では、SA4503の脳内シグマ受容体の占拠率を測定することにより、中枢神経系の疾患治療薬では設定が困難と言われている臨床用量のおおよその目処をつけ、第II相臨床試験の計画に反映させています。
2008年9月、欧州における大うつ病患者を対象とした第II相臨床試験を、計画通り終了しました。また、2009年6月には脳梗塞に伴う機能障害の改善薬としての第II相臨床試験も終了いたしました。両試験では、SA4503の安全性、有効性について良好なデータを得ることができました。

ヒトPET試験
■SA4503投与前
赤く見える領域にPET標識されたSA4503の強い集積があり、これらの部位にシグマ受容体が分布していることを示している。
■SA4503投与後
シグマ受容体がSA4503によって占拠されたため、PET標識されたSA4503の集積が著しく低下している(赤からグリーンに変化)。この差を利用して、SA4503の脳内受容体占有率を推定することができる。

今後の取組み(予定)

大手製薬会社との提携などを通して、引き続きSA4503の開発を推進していきたいと考えています。また、新規のシグマ作動薬の研究開発を進め、今後とも本領域において世界をリードしていくことを目指します。
 

シグマ受容体
シグマ受容体は中枢神経系細胞に存在する受容体で、様々な脳機能に関与している。

tPA
血栓溶解剤組織プラスミノゲン活性化因子(tissue plasminogen activator)。血の塊(血栓)を溶かす薬剤として、脳梗塞の治療に用いられる。

モノアミン
ドパミン、アドレナリン、ノルアドレナリン、セロトニンなどの総称。

SSRI
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhibitor)。神経終末のセロトニントランスポーターに選択的に作用し、うつ症状を改善する一群の薬剤。

セロトニン
必須アミノ酸の一種「トリプトファン」から生合成される物質。脳内では神経伝達物質として働き、情動と深い関係がある。

ノルアドレナリン
交感神経系の神経伝達物質。中枢神経系においては、覚醒や不安に関わる。

臨床試験
治験(ちけん)とも言う。非臨床試験で有効性(薬効)と安全性(毒性)が確認された薬の候補(治験薬)が実際、人に役立つかを確認する試験。第I相から第?相までの3段階で行われることが多い。
●第I相(フェーズ I)
志願した健康成人を対象とし、主に副作用など安全性について検討するステップ。
●第II相(フェーズ II)
少数の患者を対象に有効で安全な投薬量・方法を検討するステップ。
●第III相(フェーズ III)
多数の患者を対象に既存薬との比較を行い、有効性・安全性を検討するステップ。

PET
陽電子断層撮影(Positron Emission Tomography)。陽電子(ポジトロン)を放出する放射性同位元素でラベルした化合物を用いて、化合物の体内での挙動を調べることができる。がんの画像診断法としても利用されている。病変部位を画像により診断する画像診断方法の一つ。
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